一つのお墓に入ることができる人の制約は、法律では決まりはありません。
墓埋法では、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない」としています。
したがって、お墓の永代使用権者が認めれば、誰を埋葬してもよいということになります。しかし、一般的な傾向としては、一つのお墓に入る人は、永代使用権者の家族に限られています。
家墓などの単独墓では、墓地の管理規則などによって、埋葬される者の範囲が決められていることもあります。その場合、永代使用権者の親族に限る、というのが多く、管理者の許可があれば親族以外も埋葬できる、という場合もあります。
結婚や養子縁組で実家と姓が変わった場合、ふつうは婚家のお墓や養親のお墓に入ります。しかし、どうしても実家のお墓に入りたいという場合には、婚家側、養親側に認めてもらう必要がありますが、同時に、実家のお墓の永代使用権者にも認めてもらわなければなりません。
こうした場合、「××家の墓」など、墓石に実家の家名が刻まれている場合には、別姓の人は埋葬されていることが分からない、ということも起こります。そうしたとき、墓石に自分の姓を加えて刻字してもらったり、敷地に余裕があれば、墓誌を建ててもらい、そこに自分の姓などを刻んでもらうことも考えられるでしょう。
離婚すれば、入れるお墓がないのがふつうですから、実家のお墓に入れると考えてかまいません。姓が異なることは、無関係です。
相手に正妻のいる内縁の妻の場合は、重婚的内縁関係になります。一夫一妻制に反することでもあり、倫理的にも問題のある場合が多いようです。正妻と内縁の妻を一緒のお墓に入れることは、世間的な常識から外れている、と見たほうがよいでしょう。
それに内縁の妻自身も正妻と一緒のお墓に入ることは望まないでしょう。特に、内縁の妻との間に子がある場合には、内縁の妻のための新しいお墓を建てたほうがよいでしょう。
現代では、婚姻などによって新しい戸籍を作った者は、本家とは別にお墓を建てるのがふつうになってきました。そこから、お墓には入れるものの範囲は、永代使用権者の家族だけとするのが一般的になってきています。
新しく戸籍を作って独立した者が、本来のお墓に入れるかどうかについては、いくつかの場合が考えられます。以下のケースでは、本家のお墓の永代使用権者は長男とします。
1.未婚の次男、三男などの場合
お墓がない次男や三男などは、たとえ戸籍が別であっても、本家のお墓に入ると考えられます。
2.次男、三男などに後継ぎがいない場合
結婚して独立した家庭を持っているが、子がなく、お墓を建てていなかった場合には、永代使用権者である長男の承諾を得られれば、本家のお墓に入れます。
3.後継ぎのいない次男、三男などの妻の場合
2同様に、本家のお墓の永代使用権者の承諾があれば、本家のお墓に入れます。もっとも、妻の場合は、実家のお墓に入るということも考えられます。
法律的には問題ありません。お墓の永代使用権者が承諾すれば、誰でも入れるわけです。しかし、親族に限るという墓地管理規則がある場合は、入れないと考えたほうがよいでしょう。親族でないことが、埋葬を拒否する正当な事由と判断される場合もあるからです。
永代使用権者の意思次第とはいえ、自分だけで決めずに、親族や墓地の管理者ともよく相談して決めたほうがよいでしょう。
婚家の親族との人間関係がよくなかったり、信仰する宗教の違いなどから、夫と一緒のお墓に入りたくないという妻がいます。多くの場合、実家のお墓に入りたいと望みますが、実家のお墓の永代使用権者の承諾がなければ入ることができません。
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