現在最も多く見られるのは、家族を合祀するお墓では「○○家之墓」や「○○家先祖代々の墓」といったものです。個人や夫婦の単独墓なら、個人や夫婦に戒名や俗名が刻まれます。
また、「南無阿弥陀仏」や「南無妙法蓮華経」などの名号や題目を刻むこともあります。宗教にこだわらず「光」や「心」といった言葉を刻んだものも見られるようになりました。お墓を個人の記念碑的なものとする立場で、宗教にのっとった文言を選ぶ場合もあります。
また、故人や先祖の供養のためではあっても、宗教とは関係なく、自由に選ぶ場合もあります。
現在最も多く見られる家族合祀のお墓を仏教式で建てる場合、一般的な墓石の文字には、次のような要素があります。
1.家名
2.埋葬者の戒名
3.埋葬者の俗名
4.埋葬者の没年、享年
5.建立社名と建立年月日
6.仏を表すもの
竿石の表面に刻みますが、家名の表し方はいろいろあります。
「○○家」
自分がそのお墓の初代である場合などに多く見られます。
「○○家代々」「○○家先祖代々」「○○家累代」「○○家先祖累代」
これらには、「為○○家先祖代々供養」の意味があります。
これらに「之墓」と付けることも多く見られ、「○○家之墓」「○○家先祖代々之墓」「○○家累代之墓」「○○家先祖累代之墓」などになります。
誰が見てもお墓に違いないのだから、「之墓」は不要だとする考え方もあります。また、「之墓」では、「為○○供養」の意味にはならない、という考え方もあります。
戒名(浄土真宗では法名、日蓮宗では法号)は、没年、享年(数え年で刻む)とともに、竿石の側面や裏側に刻みます。竿石のどこに刻むかは、地域によっても異なります。
一例ですが、向かって右側面の右側から順に刻み、不足すれば裏面に刻み、左側面には独身の死者のような非相続人を刻む、というようなこともあります。
分家の場合は、分家初代からの戒名を刻みます。
戒名を刻む順序は次のようになります。
1.亡くなった順に刻む
2.年長の順に刻む。この場合、一人一人のスペースは決まっており、決められたスペースに刻んでゆきます。
どのように刻むかは、宗派や地域の慣習に従います。
戒名と俗名、没年、享年は、ほとんどの場合、セットになっています。俗名を墓石に刻むことについては、二つの見解があります。
1.俗名は刻まない。俗名は生前の肉体が持っていた、煩悩に満ちた名前であり、墓石は仏塔なので、俗名は刻まないという考え方です。
2.戒名でも俗名でも、どちらを刻んでもよい。肉体が滅びれば俗名は意味がなくなるので、こだわることはない、という理由です。
竿石の側面や裏側に刻んだりします。また、竿石は仏石なので、これらの文言はへりくだって、人石である上台石に刻むべきである、とする意見もあります。上台石の最もへりくだった場所は向かって左面です。
ただ、上台石の表面積は狭いので、建立者名や建立年月日を刻みにくいということもあり、竿石に刻むことが多いようです。建立年月日はたいてい故人の回忌の仏教行事の日だったりしますが、「○月○日吉日」などとします。
お墓は本来仏塔なので、仏を表すものは欠くことができないのですが、仏式のお墓でも、これを欠くお墓は多く見られます。仏を表すものは竿石の表面に刻み、代表的なものは次のようなものです。
南無阿弥陀仏
浄土宗や浄土真宗など阿弥陀仏を信仰の拠り所とする宗派
南無妙法蓮華経
日蓮宗など、妙法蓮華経(法華経)を経典とする宗派。
南無釈迦尼佛
禅宗など、釈迦の教えを伝える宗派。
倶會一處
「倶(とも)に一つ処に会う」という意味の阿弥陀経の経文。
これらの文言の場合には家名は上台石や水鉢などに掘り込んだりします。
頭に梵字を、続けて家名を刻むのがよいという意見もあります。この場合「之墓」は付けません。
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